小説風「織田信長」

小説風「織田信長」

 尾張の大名やってる織田信長だ。普段は天下統一を掲げて戦国大名達と戦を繰り広げている。今日は家臣の目を盗んで狩りを楽しんでいる。馬なしで狩りは成り立たないから愛馬に跨り辺境の地まで出向いているわけ。馬について日頃から思うんだけど,この戦乱の世を駆け抜けるためには馬は必要不可欠だ。戦するにも,狩りをするにも,他の国に献上するにしても,馬ありきの戦国時代なのだ。武将の中には乗馬せず駕篭を使う輩もいるが,そんなもので自由に動けるわけないから武将を名乗るなら馬に乗るべきだろう。あぁそれと石高の低い武将でも無理して馬には乗っているが,それくらい馬は戦国武将のステータスとなっていということだ。であれば当然,武勇を上げたい戦国武将は必ず乗馬していると言っても過言ではない。中には落馬が怖くて乗れないうつけもいるわけだが。それでも戦国武将こそ馬は必要不可欠といっていいだろう。権力を示すためにも,戦で武功を立てるためにも馬は必要なのだ。

 しかし実際,乗馬というのは落馬との危険も隣り合わせなわけだから乗馬というのは命がけだったりする。昨今の戦では特に落馬する武将が目立つようになってきたからな。これまでの戦では敵の本陣に突っ込む馬上突撃は有効だったんだが,槍を複数人で構えられると突撃は出来なくなってしまう。これはいわゆる槍衾という戦法だ。この戦法が編み出されてから馬上突撃して串刺しにされて落馬するうつけ者が目立ち始めた。ちなみに家臣の秀吉は槍衾の戦法を得意としているから家臣ながらも精魂の腐った輩だと思う。

 戦場で落馬するうつけ共はこれまでたくさん見てきた。じゃじゃ馬を操れず落馬するうつけ,矢の痛みに失神して落馬するうつけ,戦で死んでいるうちはまだうつけと言えるが,馬の世話中に蹴られて死ぬ武将はまさしく大うつけと言ってもいいだろう。あと個人的に勘弁して欲しいと思うのはこともある。例えば,急な崖を馬で下れるかという遊びが武将の間で流行りつつあるということだ,馬を狂った遊びに使うのは勘弁してほしいし,遊びで落馬してしまってもこの時代においては切腹ものの恥だ。とはいえ落馬するうつけは皆切腹すべきだと言っているわけではない,むしろ馬の世話に手を抜くから落馬するうつけがおると考えている。

 鎧と刀ばかりに金をかけて馬の世話を怠るうつけ共がいる,あと不作の年もあるから,馬を満足に世話をできない武将も存在するというということだ。これは貧しい武家ほどよく聞く話だ。これは武家だけの問題ではなく,石高の高い大名にも言えることだ。このように馬に無頓着だから落馬するのだ。俺は南蛮由来のオーガニックの牧草を愛馬に与えているんだが,鎖国してるうつけ共はその辺の草を与えているようだから救いようがない。そんな考えでは天下人にはなれるわけがない。

 先日の軍議の話だが,将来尾張に他国が攻めてきたらどうするというのだと,家臣の明智光秀に問うたことがある。やつめ,焼き討ちにすればいいなど抜かしおった。国を焼こうとするうつけがこんな身近におったとは驚きだ。光秀にはそんな気の抜けた考えでは他国に打ち勝てんぞと折檻してやったわ,焼き討ちなんぞ考えるうつけがいたら火縄銃の的にしてやればいいだけの話ではないか,がはは。

 戦で落馬するようなうつけの事だが,そもそも落馬する前にうつけは串刺しにされるか,打首にされているので落馬について考えられる武将は少ないだろうな。死んでから馬について考えるのであろうな,つまり馬は武具の一つでしかないと考えているうつけが落馬するわけだ。俺は親切だから戦のたびに馬の重要性をうつけに教えてやっているんだ。まず戦で貧相な馬に乗馬している武将を見つけたら,弓で射ったり,槍で串刺しにしたり,種子島を打ち込んで知らせてやることにしている。そうやって落馬するなと教えてやっているんだが,落馬する前に絶命してしまう武将が多くてあきれるわ。うつけは馬の重要さに気づく前に絶命してしまうということか。がはは。つまり,俺が馬の重要性を知らしめる方法は一つだろうな,愛馬に南蛮由来の牧草を与えて,手入れを欠かさないことだ。いずれ俺は天下統一を果たすだろうから,凱旋中に俺の愛馬を見たうつけ共も馬を大切にするようになるだろう。うむ,これしかない気がする。織田信長,天下統一,馬も大切,まさに第六天魔王,あっぱれ。

 俺の地元尾張の日常なんだけど,俺が乗馬している時は地元百姓は察してくれるのがわかる。俺の馬は天下一の愛馬だからな,中には馬を見るのも恐れ多いのか地面に額をこすりつけたままのやつもいる。馬を褒められるのは照れくさいが嬉しい気持ちもあるがまだ天下統一の途中でしかないし,世界征服までの道程は遠い。俺も戦国武将だ,戦国武将というのは華々しくも壮絶な人生が待ち受けているものだ。それがこの戦国時代だ。この戦乱の世に不満などはない。

 最近は軍議ばかりで退屈していたが、久々の狩りは心躍ったわ。愛馬に跨り遠方まで行った甲斐があった。馬がいればどこまでも駆け抜けていける。天下統一まで落馬することなどないだろうな。がはは。


あとがき
信長の小説を書きたくなったので書きました。
歴史のテストが赤点ばっかだったので悔しくてよく泣いてました。
「がはは」たぶんゲームのランスシリーズの影響だと思います。

原案
リライト企画『第2のRira』①「思いやりの向こう側」
ブログ新企画やりまーす - ですね。note