「山月記」セルフカットエディション

「山月記」セルフカットエディション

 現代日本、SNS全盛の時代、群馬の俺は若くして普通自動車免許資格試験に合格するほどの秀才であったが過剰な自信家だったがゆえにアルバイトが長続きしなかった。フリーターという身分に満足できずyoutuberとして名声を集めようとした。しかしバイトを退いたためか経済的に困窮していて挫折しそうな生活が続いた。健康保険と年金を払うためにも再びバイトを始めなければならない。そう覚悟した俺は時給の高い東京を目指すが、道中、自尊心の高さゆえ屈辱的な思いをさせられてしまう。そして道中の埼玉で発狂し、そのまま奥多摩の彼方へ消えて行方知れずとなる。

 翌年、奥多摩の奥深くの山でブロガーが天狗に襲われかけるが天狗はブロガーをみるとはっとして茂みに隠れ、人の声で「危ないところだった」と何度も呟いた。不思議と親近感を持ったブロガーは「どうしたんですか、コスプレですか」と茂みの方に声をかけると、天狗はすすり泣くばかりだったが、やがて低い声で自分はyoutuberを目指していたと答える。そして天狗はそうなってしまった経緯を語り始め、今では天狗になっている時間が次第に長くなっているという。インターネット回線のない天狗はブロガーにブログにしてくれるように撮影依頼した。自分が天狗になったのは自身の臆病な自尊心、尊大な羞恥心、またそれゆえに切磋琢磨をしなかった怠惰のせいであると天狗は叫びながら語った。気がつくと撮影しているブロガーも涙を流していた。

 夜も更け、天狗は別れを告げて奥多摩の彼方へ消えていった。ブロガーは帰り道、youtubeよりも天狗がハリウッドでマーベルヒーローズとしてアベンジャーズに出演する日も近いだろうと考えていると、草むらから一匹の犬が現れ、月に向かって吠えた後、奥多摩の方へ消えていった。


参考
山月記 - Wikipedia