時代を超えて「妖刀村正」

時代を超えて「妖刀村正」

まさか,現存するなんて・・・

心でそう叫んでいた,あの日のことを僕は思い出した。

村正という日本刀の作を知っているだろうか。

村正は史上最も有名な刀工名の一つであり,徳川家康,豊臣秀次らも含む戦国時代の武将から史上の業物として愛用され,美術品としても評価の高い日本刀である。現代日本にもいくつかの村正は現存していたが,時代とともに見かける機会は少なくなってきている。

普段時代劇などで見かける刀は刃はなくただギラギラと下品な輝きを放つだけの代物である。それに対して村正の人を斬るための鋭い刃が圧倒的な存在感を放ちつつも人を狂わせるかのような妖艶な輝きを放っているから妖刀とも呼ばれている。

村正について,少し整理しておこう。

村正とは,村正という刀匠が作った日本刀なのだが,村正という刀はこれまで多くの権力者を殺してきた歴史や村正を持ってから人斬りへ豹変してしまうなどの逸話が多いため,常人が帯刀するような刀ではないということがわかる。

つまり,村正は人を狂わせるのだ。となれば村正を帯刀する者がいたとすれば,それは刀に取り憑かれた狂人の類であると,つまりその時点で死を覚悟しなくてはならないということだ。

しかしながら,村正が人を狂わせるのか,狂っているから村正を手に取ってしまうのか,その因果関係は明らかになっていない。ただ,実際に村正を帯刀する者がいとしたら,その禍々しい刀身と淫靡な美しさに見惚れている内に斬られて絶命しているだろう。

ただ僕は見たことがある・・・

村正を持つ者を2人見たことがある。

一人目は,とある駅のトイレだった。

やはり,駅にはたくさんの人の出入りするから,帯刀している者も当然多いのだが,駅のトイレだけではなぜか,人が少なかった。そんなことは尿意を催した僕にとってはどうでもよくて駅のトイレに駆け込んでスタンディングポーズで用を足していた。その時だった。

「あぁああ〜」

叫ぶように吐き捨てるように,ため息と共にアニメキャラがプリントされたTシャツにメガネ,ポスターのようなものが刺さったリュックを背負ったオタクの風貌の男がトイレに入ってきた。

彼は僕の隣に立った。

ファスナーを開けたオタクの背中を見るとリュックには日本刀が無造作に刺さっていた。

オタクは当然のように用を足し始めた。その時だった。

「あ〜」

「おしっこしたいおしっこ」

などと言いながら放尿を始めた。

それと同時にブルブルっと震えると,リュックから刀が鞘からこぼれ落ち,私の方に刀が向かって飛んできた。とっさに僕は後ろに向かって回避した。刀は僕の使っていた便器に刺さって禍々しい輝きを放っていた。

その刀は村正だった。

男は刀を鞘に戻すと「あ,すいません,」とだけ言い残し駅のホームに消えていった。

僕は自分が殺されそうになったことなど忘れていた。そんなことより村正をもっと見ていたいと思ってしまったのだった。

それから,もう一人,村正を持つ者に遭遇した。

それは,とある空港のトイレ。

空港というのは,国際的な場所だから色々な刀を見る場所だから,もしかしたら村正を見えるかな,なんて思いながらも尿意を催し始めてしまった。

空港のトイレは,僕の行くタイミングが悪かったのか,満員状態だった。

あと僕と一緒にトイレに並ぶ人がいた。その人はその場に足踏みしながら限界状態の近い状態で個室の空きを待っているスーツに太刀を帯刀しているオッサンだった。

僕は小便がしたいだけだったのですぐに空いたが限界間近のオッサンの順番は中々回ってこないようで,使用中の個室にも聴こえるようにでかいため息を繰り返して,怒りを顕にし始めた。

そのとき,オッサンはなぜかスマホを床に落としてしまったようで画面はバキバキになったスマホを拾い上げようと鬼の様相で身をかがめた,その時だった。

それと同時に腰に掲げた日本刀のズルリと抜けて刀身が顕になった。

刀身から発せられる圧倒的な存在感と刀身はより一層、禍々しく艶めかしく輝く。

ちょうどおっさんは屈んでいる姿は,まさに居合斬りの構えに見えた。

この男は確実に人を斬ろうとしている。

僕は確実に斬られると確信すると同時に失禁していた。

僕だけではなく周りの小便中の男全員が失禁していた,

それからしばらくしてわかったが個室の男たちも全員失禁していた。

そんなことがあっておっさんにトイレが回ってくることもなかったから最終的におっさんも漏らしていた。

おっさんは漏らしながら「もう無理・・・」と呟いていた。

僕はこのような体験から,村正の発する殺意,威圧感,妖艶さを身を持って知った。

それから後日,お腹に刀傷のような蕁麻疹ができていました。

村正は人の肉体だけでなく人の精神すらも斬ってしまう妖刀なのかもしれません,

こうして僕は,二振りの村正と2人の所持者に出会いましたが,どちらも一瞬だったのにもかかわらず村正に魅了され,村正を持つ者によって圧倒されて最終的には狂ってしまいました。

これからもおそらく妖刀に狂わされると知りつつも存在感と美しさに魅了されてしまうことでしょう。


原案
『第2のRira(リラ)』③時空を越えて
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