A4用紙を文字で埋めたい衝動

A4用紙を文字で埋めたい衝動

ワープロを起動して,
白紙のファイルにポチポチと文字を打っていく。

書きたいことだけ書いてもいいし,
長々と書いてもいい,
色も自由,装飾を凝ってデザインしてもいい。

私は書きたいことだけ簡潔に書いているつもりなんだけど,
文字を打っている途中で,そんなことも忘れてしまう。

一枚のA4用紙の六割程度で埋め尽くされると,焦点は行単位の文字列ではなく,文字サイズ,フォント,装飾,行間,余白といったところ,つまるところ用紙全体のバランスなんかが気になってしまう。

もはや内容なんかは二の次になって,余白を,用紙を,文字で埋め尽くしたい衝動に駆られる。

そうなってしまうと,
目的のために書くのではなく,
A4用紙を文字で埋め尽くしたいから書く。

用紙いっぱいまで文字で埋め尽くすために,次第に狭く設定される行間と余白。

1ページに,どこまで文字を埋め込めるかという謎の挑戦が始まる―

1枚の中で辻褄を合わせるために,文字もどんどん小さくなっていく。
デザインのために削られる文章,
インデントを統一するために省かれる説明,
それでも文字と情報の入力は止まらない。
そうやって,作られた1枚のファイル。

A4用紙に,びっちりと文字で埋め尽くされていて,1ページに書かれた情報は膨大すぎて,文字で埋め尽くされているから真っ黒になってて,むしろ読む気が失せるような,
統一感を感じさせるが,至るところの情報が欠損している。
文字で埋め尽くしたい衝動で,そんなファイルを作ってしまう。

そんなファイルは,自分でも読みづらい,使えないし,
それでも,衝動的に文字で埋め尽くされたファイルを作ってしまうことがある。

文章を書く際には,衝動,余白,行間,に気をつけたい。