クレジットカード審査係長「半沢直樹」

クレジットカード審査係長「半沢直樹」

融資で社会復帰を手助けするバンカー。
その名は半沢直樹。

半沢が新たに任命されたそのプロジェクトがあった。

財団法人「無気力エレクトロニクス」再建計画。

この会社は,利益の少なさ,資金繰りの問題もあって社会復帰は難航していたが,新世代のパソコン導入を目指し,クレジットカードでの巨額の資金提供を求めていた。

役員室。
役員たちが半沢を問い詰める。
「この無気力エレクトロニクスという会社。負債もないが,今までのクレジットヒストリーを確認したところ250円しか使った形跡がない。なのに突然,CPU,メモリを買うために我々に巨額な融資計画を持ちかけてきた。怪しいよ半沢君。こんな会社信用できない。そもそも計画をもちかけてきたのは半沢,お前だ。どうしてくれるんだ!」

半沢は説明する。
「この企業はPC関連パーツをアマゾンという企業から取り寄せる計画を打ち立てています。額にして全資産の50%を放棄せよと言っているようなものであります。取引が成立した場合,翌月に口座から莫大な金額が引き落とされます」


役員たちはどよめいて野次を飛ばす。
「口座にその資金がなかったらどうするわけ?ね〜?半沢君?」
「クレジットとはつまり信用なんだ。それは借金なんだよ。半沢!」
「来月!本当に口座に資金がある確証がはあるわけ!?半沢君?」


頭取が見つめている中,半沢が答える。
「クレジットカードの問題解決専門のタスクフォースチームを結成します」

騒然としたまま役員会議が終わった。


心配そうな部下が尋ねてくると、優しい顔を浮かべながら半沢は持論を説き始めた。
「俺はバンカーとしてカードを使う人を見てきた。だからわかる。無気力の口座はまだ腐っていない。なんで,それがわかるって?俺は普通のバンカーとは違う視点がある。それはなブログに書かれた日記だ。口座に資金がなくなってくるとブロガーは日記を書かなくなってくる。日記を書くということは自分の口座にプライドを持っているということだよ」

それを聞いた部下はより一層不安な顔を浮かべて立ち去っていった。


無気力エレクトロニクスに訪問した半沢は,こう提案した。
「私はバンカーでもありクレジットカード使用歴35年パーフェクトクレジットマンです。カード実績がなくても口座に金があれば融資できる!これが今回用意させていただいた御社のお支払プランです。端的に申します。1回払いでお支払い下さい」

そう提案された,無気力エレクトロニクス代表は,「あぁ,はい」と頷いてサインするのだった。


帰社した半沢に役員たち責め立てる。
「馬鹿か,半沢!そんな資金口座にあるわけ無いだろ」
「それにAmazonの買い物リスト見ましたよ。なんですかあの額は横暴ですよ」
「どれもメーカー品で高価なパーツばかりだ。こんなの無茶だ。パソコンを建造して何に使うんですか?」

次の日,嫌味な同僚が半沢に告げる。
「半沢くん,ご愁傷さま。ここ5年の無気力は経済活動を行っていませんよ。つまり信用力は皆無。自作パソコン建造のコスト,あなたのしていることは社会復帰ではなく融資させて破産させるゲスのやり方なのよ」

半沢は激怒して言い放つ
「やられたら倍にしてやり返すのがモットーなのです。口座資金が足りないならば働くしかありません。足りないならばバイトでもさせて債権を回収すればいいのです。カード使ったら,働き返す。倍返しだ!これが私の提案する社会復帰プランなのです」

それからすぐ、半沢は役員を呼び出し,ついに宣言する。
「我が銀行は社会復帰のための融資を続けます。それがバンカーとしての仕事。そして皆さんにお伝えしなければなりません。無気力エレクトロニクスのパソコン建造計画の件,既にカード審査済みです。つまり、パソコン建造費を融資しました!」

役員一同が騒ぎだして半沢を罵る。
「なにやってんだ半沢!」
「口座に金がなかったら半沢の責任だぞ」
「侘びて,土下座しろ,半沢」
「わかってるよな?失敗したら地方に出向だからな」
「原作に失礼」
「半沢直樹の偽物」


かくして,クレジットの枠を超えた巨額融資を獲得した無気力エレクトロニクスはパソコン建造に挑む。一方バンカーとしてクレジットカードの融資を決行し,足りなければ強制労働させようと企む半沢であった。

社会復帰と融資の関係に注目した新感覚ドラマ「半沢直樹」。

銀行員は融資を行うものだが社会復帰計画までしてしまう人情派のバンカー。

それが半沢直樹という物語なのだ。