東京に行った

東京に行った。

自分の思い描いてきた理想の東京などそこにはなかった。目の前にあるのはドラマで観たことがあるような溜池。そこで難破したボート。それだけ。

宿泊したホテルは禁煙だった。仮に喫煙すると罰金は2万円だと書かれていた。

外は寒かった。出歩く気にならなかったけれど,外にある喫煙所は度々利用した。

缶チューハイを2缶買って飲んだ。シャワーを浴びながらカップヌードルティースプーンを使って食べていた。そこで私は東京に居ることにひどく緊張していることに気づいた。

日中は風景ではなく手元の端末の画面を眺めていた。SynologyというメーカーのNAS(Network Attached Storage)の製品カタログ*1を眺めて過ごしている時だけ気分が高揚していた。

東京から自宅に戻ると頭の中は「疲れたな」という言葉で埋め尽くされていた。早寝,有酸素運動,栄養を摂った。それでも頭から湧いて出てくる言葉は「疲れた」だった。また,感じていたのは疲労感だけではなかった。NASで複数のハードディスクを束ね,高速化したストレージを構築していくことの魅力に取り憑かれ始める。

次第に自分のストレージを拡張すると東京の疲労が癒えるだろうと考えるようになっていった。そうすると疲労感のことは意識せずに済んだ。複数のHDDでRAIDを組んで実現する奇天烈な転送速度。Wifi6に対応したルーターや10BGbEポートの環境に対応するための課題やベイ数が4以上のNASについて考えることに夢中になった。