わんわん☆ぱにっく

わんわん☆ぱにっく

あるところにラーメン屋があった。

このラーメンは先祖代々守り継がれてきたスープが絶品であり、あの味覚党の辛口大臣でさえも「旨い!」と言わしめたほどであった。

そんなラーメン作りを体得したいと弟子入りを懇願する者たちも日々訪れていた。

秘伝のスープを守るために店主はそれらを追い返すのだが、中々に言うことを聞かない者もいて、店先ではスープを巡った攻防が日々繰り広げられていた。

ある日、わんぱくな者がスープを求めて訪れたのだが、いつものように店主は彼を追い返すために罵るのだった。

「あんたねぇ、うちの店の前でいちいちワンワンと吠えないでもらえないかしら」

「私はねぇこの店で11年もやってきたんだ。あんたのみたいなやつに舐めてもらっちゃ困るんだよ」

「わかってるよ。あんたの狙いはうちのスープだろ。だけどね、うちの店の秘伝のスープは絶対に渡しゃしないよ」

「このスープは先祖代々守ってきた大切なスープなんだ。秘伝のレシピを基に代々受け継がれてきた極上のスープ。それがうちのスープなんだよ!どこの犬の骨か知らないようなヤツには渡すわけにはいかないんだよ」

それだけ罵られても彼は動じなかった。大抵のものはそれだけ罵れば帰っていくのだが、彼はじっと店主の顔を伺ったまま黙って見つめるのだった。

そのため、店主は少し困惑してが、悟らせないためにもさらに罵るの他なかった。

「そんなつぶらな瞳してなんだってんだい。スープはやらないよ!あんた、まだ気づかないのかい?あんたは負け犬なんだよ。負け犬らしく帰って遠吠えでも吠えてなさいよ」

「ん、なんだい?ク~ンと鳴いて、みっともないヤツだね。そんな行儀正しくお座りしちゃって、顔を傾けて、そんなことしても無駄よ」

すると、彼は目を輝かせて尻尾を振りながら、舌を垂らしながらハッハッハッを息を荒げだし、店主を舐め始めた。

とうとう、店主はおかしくなってしまった。

「やめて!そんな顔して、情けない声を出しながら私を見ないで!舐めないで頂戴!」

そう言うことしかできなくなった店主は限界を感じてついに叫んだ。

「あんたは犬、所詮犬なのよ!犬にスープなんか作れるわけない!」

そう叫ぶと辺りはシーンと静まり返ってから、なにかが蠢く音で騒がしくなった。

ドドドドドと響く。

店主は気づく「あれ、なにこの振動?なにか来る!」

わんわん、ワンワン、ぶひぃ、キャヒン、ブホホーン、キャンキャン、パオーン、バウバウ、ぶるぶる、ハッハッハッ、キキーン、ワンという鳴き声が響く。

そうして辺り一面が犬だらけになっていた。

数えてみると、なんと101匹のワンちゃんがラーメン屋に集まっていたのだ。

その光景に見た店主は、ついに錯乱してしまって彼らに秘伝のスープを差し出してしまっていた。

101匹の犬たちはスープを舐めて一滴残らず飲み干すと、満足してどこかに散っていったそうだ。

このわんわんパニックによって秘伝のスープが消えたあと、そのラーメン屋も潰れてしまったのそうだ。

店主は犬にスープを渡してしまったことを後悔してわんわんと泣いたそうだが、その後は心機一転、新事業としてわんわんも入れるプールを立ち上げて公開するとまたたく間に話題となり、わんさかと犬が集まって繁盛したそうな。

おしまい。