サイゼ グラッパ

葛藤どうしようもなく ゆらぐ街
冷めたミラノ風ドリア食べ ただ
どうしようもない街、虚ろな星

満たされたい理想のスケッチ書きし日。字余りの直後、突いてくる街にうつむき漂う交差点と無秩序を照らす街灯冷えた街、信号機青の影が暴く街。

サイゼリヤの杯、満たされて
高架下に人々の影が蠢いた
満たされんと言った焦燥と
平成の街、兎角飲むデカンタ
酒気帯びたアクター降下した

「予約は嫌、取り急ぎ、酒飲み夏」
「真の夏、揚げたてポテト、マスト」
「狂おしやサイゼリア今宵、夏」

夕方の街の路上。セントラル通路をフラフラと彷徨う。店に入ろうとせずにうつむきながら歩く。駅前の線路上に向けて、街に背を向けて帰ることにただ、やるせなさ。金は心もとなく行く宛もない。どうしようもなく不相応な街の中で。――駅前「サイゼリア」の看板を見つけた心は自分の居場所を見つけたような安堵感を抱き、乾いた身体は酒を求めるのだった。

レストランの席に座る。店内の四方と上方の壁画に楽園の描かれた。メニュー表、葡萄酒が目に留まった。渇きを満たす衝動と切望。酩酊を得た狂乱の想像に体内のアドレナリン連動したかのように目は血走っていた。店員を呼びつけて口で発したのは「グラッパ」だった。

運ばれてきた杯に注がれたワインひたすら蒸留したグラッパ。この透明感こそグラッパ。口に含むとブドウ感皆無なほどのアルコール純度。舌が痺れた。――数分後、体中が熱く火照り、顔は赤くなると、街の照明、色温度なんてどうでもいい。

会計で数百円払って店を出ても、電車で街を去っていく時も熱を帯びたままだった。葡萄の雫、情念湧かすグラッパが身体の中を駆け巡っていた。

2021年サイゼリアメニュー表まで駆け巡った。

グラスワイン ¥100
食後酒 ラコンブリッコラ ¥300
白ボトル ドン ラファエロ ¥1100
白ボトル ベルデッキオ ¥1100
赤ボトル キャンティ ボトル 1100
赤ボトル キャンティ ルフィナ リゼルバ ¥2200
食前酒 消えたグラッパ 消えていった