水蓮の上で水瓶を持った女性の絵の調査

「水蓮の上で水瓶を持った女性」の絵

 
 ある日「水蓮の上で水瓶を持った女性」の絵を見せてもらう機会がありました。その絵は親しい人物から譲り受けたインド産の絵で,持ち主も妙に気に入っていとのこと。その絵に神が描かれているだけはわかったのですがそれ以上をわかりませんでした。それからその絵のことが気になってしまいました。なんとなく、インドの神話を調べて絵画を理解できないかと考えました。

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実物の写真


今回はそのインド神話で「水蓮の上で水瓶を持った女性」をどのように捉えられるだろうか調査します。

方法
「水蓮の上で水瓶を持った女性」の条件に該当する神がいなかったので「水連の上に佇む女性」と「水瓶」に分けてインド神話を調査することにした。水蓮の上の女性はラクシュミー,水瓶はアムリタの項を参考にした。神話に登場する神やアイテムを象徴する言葉はwikipediaに記述された神話から抽出する。

調査1 水蓮の女性の象徴

水蓮の上に佇む女性は水連がシンボルのラクシュミーの特徴と一致。
ラクシュミーの象徴語を下記に記す。

ラクシュミーの象徴語

象徴語 説明
蓮華 ラクシュミーのキーカラー
乳海撹拌 ラクシュミー誕生きっかけ
水連 赤い蓮華,ラクシュミーの持ち物・シンボル
金貨 ラクシュミーの持ち物・シンボル。貯金箱で描かれることもある
幸運 移り気な性質
逃げる ラクシュミーの性質
インドラ 元夫,自分の元に留めておくためにラクシュミーを4分割にしていた
ヴィシュヌ ラクシュミーを手に入れた神,ラクシュミーの夫
アスラ ラクシュミーを手に入れようとしたが失敗した神
聖仙(リシ) 姉の夫
不幸な姉 アラクシュミー
サラスバティー ラクシュミーと混合されることもある神

調査2 水瓶の象徴

水瓶を持つ神として霊薬アムリタ携えた医神ダンヴァンタリを調査しようとしたがwikipwdiaの記事がなかったため,水瓶を象徴する霊薬アムリタの象徴語を抽出した。

アムリタの象徴語

象徴語 説明
乳海撹拌 アムリタの製造法
不死 アムリタの効能
アスラ族 アムリタの製造者
山,ヴァースキ竜王,1000年 アムリタ製造の道具と製造にかかった年月
ダンヴァンタリ神 アムリタの持ち主
神々とアスラの争い アムリタの争奪戦
神々 神々がアムリタを手に入れて飲むことができた
魔神ラーフ アムリタを盗み飲みした神
ラーフとケートゥ ラーフはすぐに首を切られたがアムリタのおかげで不死だったので死なずに分裂した。日食,月食を起こす悪星となった
ガルダ アムリタの略奪に成功した鳥神
ナーガ アムリタが置かれている床を舐めていたら舌が二股になった逸話がある
ソーマ酒 古代インドのヴェーダ祭祀の供物。万病の薬とされていた

結果

「水蓮の上で水瓶を持った女性」の絵画はラクシュミー的でもありアムリタ的な絵画と捉えて調査を行った。

象徴語を比較すると乳海撹拌や与奪の対象となっているといった共通点も見受けられ,似た性質がある一方,ラクシュミーは「幸運」,アムリタは「不死」といったように象徴語に明確が違いがあった。

考察
水蓮の上に立った女性をラクシュミー的に解釈すると幸運と移り気な性質を象徴しているし,水瓶をアムリタ的に解釈すると不死,争いの火種の象徴としても解釈できそう。

「水蓮の上で水瓶を持った女性の絵が象徴していること」

「水蓮の上で水瓶を持った女性」の絵はまさに幸運と健康を象徴していると考えた。そして、幸運と健康を願う人の気持ちが絵に込めてられているとも言えるだろう。

補足
 絵画をインド神話で解釈しましたが,可能性の一つでしかありません。


仮説

「水蓮の上で水瓶を持った女性」の絵はまさに幸運と健康を象徴しているので,この絵の送り主は相手の幸運と健康を願って送ったのかもしれない。

持ち主が絵を気に入っているのは,描かれている絵に望ましい自己像やアイデンティティーを見出しているからなのかもしれない。

水蓮の上で水瓶を持った女性の絵はラクシュミー的でもあるしアムリタ的でもあると考えるとインド神話で理解を深めることができるだろう。


感想
「魂のこもった絵」なんて表現がありますが,調査をしてみると絵に込められた想いが確かにあるんだなと思いました。


引用文献
アムリタ - Wikipedia
ラクシュミー - Wikipedia